2025年に読んだ本の中から、特に記憶に残るものを紹介しようと思う。(と
思ってもう2月を迎えようとしている...)
「ちょっと踊ったりすぐにかけだす」古賀及子(2023)

元デイリーポータルZの「中の人」古賀及子さんの最初のエッセイ。
2018年から2022年の日記でかなり間が空いていたりするので、本当に本で出版するような想定は全くない状態で「ただ書きたくて書いている」というのが全体に漂っていて、ある意味純真無垢な日記と言える作品。
2020年以降のコロナ禍の時代、子供達との日々の生活を中心にいい意味でライトに読める文章。さすがDPZの中に寄稿していただけあってどんな出来事もシンプルに面白がれる人、特に子供との接し方はどんな教育本よりもタメになると感じた。
被写体となる子供2人もかなりユニークというか、面白センスを持ち合わせている子供でこの親にしてこの子あり、といった感じ。それだけでも十分読み応えある。
興味深かったのが、後書きに「この日記を娘自身が読んでいるけど、まるで他人の話のように他の本と同じような感じで、時に笑って読んでいる」と書いてあって古賀さんはそこから日記といえどもそれは彼女自身のフィクション敵側面もあると分析している。
ライトな文章なので何も考えずに読める一方、古賀さんは実は「日々の出来事を書く」ことに対してブレない芯があり、物書きとしての問題提起をやんわり起こす示唆に高いライターだと思う。
ちなみに古賀さんは2024年に3冊、2025年に4冊という怒涛の勢いでリリースを重ねてて凄い。
「星の子」今村夏子 (2017)

「むらさきのスカートの女」を2024年の暮れに古本屋で購入し、そのまま読まないで数ヶ月放置。こういうことは結構よくある。通勤の電車の間や子供が寝る前の10分など、読むタイミングが断片的であるが故、今の生活ルーチンの中ではフィクションを読むことが大分ハードルが高くなっており、エッセイや教育本、ビジネス書とかの方が正直読み進めやすい。
タイミングの訪れを待っていたら、結局半年くらいかかってしまったものの、読み始めたら意外にあっという間に終わってしまった。自分のフィーリングに合う感じ?リーダブル?でとても面白い。もっと若い頃に今村夏子さんの本に出会えたかった、というのが悔しまれる。
「むらさきのスカートの女」読後の後、「星の子」を購入。
「星の子」はすでに見た映画の方が結構良かった記憶で、映画見てからの原作はいかがかなと思っていたが、原作はもっと乾いた印象というか、映画と読後感が異なりそれがとても面白い体験だった。
主人公から見た自分の置かれている状況に悲壮も苦しみも感じられない。それが故、残酷さみたいなのが浮き彫りになっていて、宗教二世問題の難しさを物語る作品。
「僕らは戦争を知らない」小泉悠(2025)

二子玉川の紀伊国屋書店は、子供の絵本が充実しているし、いくら子供に立ち読みさせても嫌な顔されないのでとても助かっている。
その児童書コーナーの最新刊で見つけた本。帯には「人はなぜ戦争をやめられないのか」。
主に日本の近現代の戦争の歴史と、昨今の国際情勢を中心に、漫画と見開きごとのテーマで図解付きの解説が載っている。
近い将来に息子に読ませたいなと思って購入したものの、親がちゃんとわかっているのか、っていう問いは当然出てきて、凄く為になる内容でした。
戦争にまつわる日本の歴史に対して、恥ずかしながら自分でも理解が浅い部分が多くあり、例えば靖国参拝の何が問題なのか、核の傘とは、ロシアはなぜ以前から孤立していたのかなど、自分が子供の頃に読めてたら、もっと早く政治や世界の出来事に関心を向けられたのにな、とか今更ながらに思ってしまった。子供にも大人にも良い本です。
息子には別に勉強とかいう感じでなく、そのうちなんとなく読んでもらいたいので、すぐに手に取れる場所に置いておこうと思う。
「それはただの偶然」 植本一子 (2024)
「ここは安心安全な場所」植本一子(2025)

"わたしの現在地" と名打たれた植本さんのエッセイシリーズ。
植本さんのことは当初は写真家で故ECDさんの奥さん、ということで知っており写真はとても好きだったが文章は読んだことがなかった。
妻があるときから植本さんの本を貪るように読み始め、それに導かれて私も読むようになった。
植本さんの文章は日々の生活を丁寧に描きながら、生きづらさや日常のささやかな喜び、家族やパートナーとのあり方など、私と性別も違えばライフスタイルも異なるのに同世代を生きるものとして人ごとではない何かを感じている。文章を通じて植本さんを応援したくなる、そんなエッセイストである。
「それはただの偶然」はこれまでの日記から、エッセイという形でテーマを絞って文章にまとめられていて、植本さんの文章を通じた表現に変化を迎えていることを感じる内容であった。また、小森はるか監督の映画「ラジオ下神白」について触れ、私もあの映画はとても感動したのでとても共感した。
最初のエッセイにも書かれていた岩手県遠野市のワークショップ(と、馬との交流)での話をより詳細にまとめたものが「ここは安心安全な場所」である。こちらはとても静かな印象の作品で、挿入されている本人撮影の写真も素晴らしい。できれば大きいサイズでフルカラーで見たかったがその展示会には行けずに終わった。
写真を撮ってもらったこともありお話をしたこともあるのでなんとなく年齢も近いことから、植本さんが書き続ける限り僕も妻も読むだろうし、同じ時代を生きているものとして「共に闘っている」という意識を持てる稀有な存在だ。