目盛りメモリーズ(旧One Click Say Yeah 2020)

音楽、映画、その他日常の生活からはみ出たもの、または日常そのもの

「トットてれび」を振り返る

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NHKのドラマ「トットてれび」が終わりました。

 

最終回みました?

 

私は、とても感動しました。

 

あのエンディングに、このドラマで伝えたいこと、黒柳徹子の魅力、音楽の素晴らしさ、テレビの面白さ、すべてが詰まっているようでいたく感動しました。

まさかあまちゃん以降で、こういう体験をテレビで味わえるとはなぁ。

ドラマでありながら「トットてれび」という1クールのテレビドラマの枠を軽くはみ出す感じというか。

 

そもそも、徹子の部屋ザ・ベストテンも他局ですからね。しかもセットなどかなり忠実に再現する徹底ぶり。他のキー局でここまでやり通すこと出来るでしょうか。

 

最終回の大団円で、「ベストテン」を持ってくること自体が予想外だったのですが、まるで生放送を複数カメラで捉えているような臨場感。(これは個人的神回の3話目と共通している)
まさに、黒柳徹子がこだわっていた「テレビは生」というこだわりをこのシーンでも取り入れており、大友良英ファミリーによる生演奏も相まって、大きな興奮を生み出しています。

 

そこに3人の黒柳さんが登場。今の黒柳(本人)、子供の黒柳(子役)ドラマ内の黒柳(満島ひかり)。この時点で既にドラマの本編から逸脱した感じになっているのですが、さらにそこから、すでに亡くなられた森繁久彌吉田鋼太郎)、向田邦子ミムラ)、渥美清中村獅童...ハマり役!)などがなだれ込んできて、さあみんなで一緒に歌いましょう。

 

ミュージカル的というか、舞台のカーテンコールというか、そういう状態に近いのですが、こういう展開、決して得意な方ではなかったのに、なんでこんなに感動したのでしょう。
カーテンコールと異なるのは、あのシーン、決してドラマとしてまだ終わってないってことですね。役者はまだキャストの状態(と、素の状態が混じっているというか)でいて、でもドラマ内では既に亡くなっているんですよ。演奏者と死者と3人の黒柳さんが同じ空間にいる....もはや時間を超越した空間ですね。

 

そういえばこのドラマ、特に後半は本当に悲しい話が続いたのですが、それでも毎回悲壮感を漂わせないのが素晴らしいところで、その要因の一つとしては黒柳徹子の自伝的ドラマでありつつ本人が登場している点だったのかなぁと。しかも100歳(未来の本人)という役で。

この本人のポジションがとても重要で、ストーリーは全て実話をもとに作られているので当然ながら多少の誇張はされているため、かなり熱量があるわけですよ。しかしそれを一番冷静に見ているのがドラマ内の100歳の本人、という構造。ドラマの中で、「トットてれび」をテレビで見ながら「ふんっ」なんて鼻で笑ってみたり。

 

一番冷静に、自分の話を客観的に見ているのが本人、という構造が、ドラマそのものをある意味クールにしていて、これはなかなか大したもんだと思いました。

 

そして最後はドタバタしながら「もうすぐ8時44分」の掛け声とともに黒柳徹子(本人)のカウントダウンで終わる、というまさに「生放送」を意識した作り。ここがねぇ、凄くいい終わり方だなぁと。ドラマは最終回なのに、終わってないというか。あるいはドラマそのものがそこにゴールを設定していなかった感じというか。いい意味で、裏切られました。

 

満島ひかり、すばらしかった。
大友さん&Sachiko Mの編曲・演奏、すばらしかった(あ、テニスコーツ植野さんがめちゃめちゃ映ってるのも興奮した!)
あれ全部実話なんてどうかしている、と思った黒柳徹子、すばらしかった。
そして本人に素晴らしいのは、まだ黒柳徹子当の本人が生きているということ。失礼な話ですが、「死んでから作る」のと「生きている間に作る」のは全く意味が変わってきたと思います。だからこその、あのエンディングだったのだと思います。

 

ああ、何か、幸福な体験をしたなぁ、と。

もともとテレビっ子だったし、今でもテレビやラジオの生放送が好きだったのでこの作品のテーマそのものに共感したことも確かです。
しかしそれ以上に、色々音楽を見てきた身としては「ライブで起こる奇跡」を何度か体験しているので、疑似的であるが、ああいうライブ(生放送)でしか起こりえないミラクルをいかにフィクションに落とし込むか、というチャレンジに見事成功した、大げさかもしれないがメディアの本気を垣間見た、そんなドラマでした。

 

土曜日の20:15という時間帯もあってか、この傑作に気づかないまま、というか気づく前に終わってしまった印象も否めない。

是非スペシャルでもなんでもいいので、復活を願うばかりです。

 

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各回の感想は下記のブログがとても丁寧に書かれておりましたので紹介します。

hiko1985.hatenablog.com