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One Click Say Yeah 2017

「何も言わない方がよっぽどマシ」

瀬田なつき監督 映画『PARKS』感想

https://www.instagram.com/p/BTwBThfB9Th/

5月6日 テアトル新宿で鑑賞。
井の頭恩賜公園開園100周年を記念して製作された青春音楽ムービー。

・前書き

この作品ネット上で評価が分かれていて、うーん見に行くのどうしようと思っていましたが結論、見に行って良かったです。「期待しない」という意味ではハードルがぐんと低かったのでその分感動が高まりました。凄く良い映画。世間の評判とか参考にならないことを悔い改めました。今年のベンチマーク?になりそう。

瀬田なつき監督の映画は2011年の商業デビュー作『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』が全然馴染めなかったんですよね。ああここ、くすっと笑える場面なんだろうなと思いつどんどん上滑りしていく感じというか、そうなると自分自身映画に没入できなくて醒めてきてしまい、そのまま終わってしまった印象。
なのでそれ以降の作品も見てませんでした。映画美学校だしそれこそboidとかプッシュしてるから条件はそろってたんだけど...制作サイドと監督の作りたいものの間にやや乖離がありそうな気がした。原作がそもそも自分に合ってない?

あとは吉祥寺映画と聞いて思い出すのが映画版『グーグーだって猫である
あの傑作『金髪の草原』を生み出した犬童一心×大島弓子だから面白いに違いないと期待したのに....どんな内容だったか憶えていないくらい、どうでもいい内容だった記憶。

つまり、条件としては非常に厳しいのではあるが、シャムキャッツとか出てるっていうしバウスシアターなくなったショックがこの映画で供養されればいいなと思い(←そんな理由で見に行く人もいないと思うが)見に行きました。

 

・感想1(表層的な部分から)

 まずもって、若者がこれ見た直後に吉祥寺の賃貸アパート探すだろう、ってくらい街の魅力や青春っていいねーていうのが出ているでその点は完全に成功してると思う。
そして瀬田監督が『嘘つきみーくん~』の時にやりたかったことが何となーく分かったというか、例えば『PARKS』でも急に橋本愛がカメラ目線とかで語りかけてくるんですがある程度違和感がありつつ、それ以上やると恥ずかしくなるからやめてー、っていうラインをギリギリ保ってくれて、なんとか映画として結実している印象でした。

あとは3人の演技が素晴らしい。ここにおいては文句のつけようがないなと。主人公が橋本愛だから許された部分っていうのも正直あったかも。この人綺麗な顔なのに目つきが鋭すぎて喋りにもドスがきいてるから睨まれたら死ねるかもとか。おかげで映画のゆるふわな部分をギュッと締めてくれてた感じ。
さらに染谷将太。TV版『火花』で久しぶりに普通の人の役だったんだけどやっぱこの人変人ぽくていいなぁと再認識してたところ。一見普通の人みたいだけど違和感ありありで、それが演技なのか素なのかよく分からないのが魅力。『PARKS』でもあの特有の若者ミュージシャンっぽいイノセントなチャラさがつぼであんな人音楽界隈にめっちゃいたような気がした。

あとは3人が移動するとき、ずっと走ってるのがよかった。「若い」意外に何故走るのか、の理由は殆ど不要で、映画が彼らを走らせているのだが、根拠がなくても走ってるのは正しい、と感じました。

と、これだけ並べても既に十分面白い映画になる要素がそろってますが、肝心の後半の展開の部分ですよね。ここで一気に評価が分かれたのかなと。

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・感想2(内容について↓以下、ネタバレあり)

 この映画がすごくよかった部分が2つあって、1つ目としてこれは完全に挫折の映画ですよね。その意外性が良かったというか安心しました。
チアリーダー部の挫折と成功」みたいな完結型映画はきっと見た後に高揚感を得られるのかなと思いますが、明確な成功体験がない人にとっては殆ど嫌がらせにしかならない場合があります。辛うじて10代がそれを見るなら「頑張ろう」と希望を持てるが、その青春を過ぎてあと60年間生きていく人間にとってはどうだろう。もっと簡単に言えば誰かの成功体験より、完全なる挫折を共有したいって気持ち、あると思うんですが。

映画『PARKS』は、橋本愛が過去の栄光から自身をアップデートできずにこじらせている状態で、友人はモデルになったりして成功してるのに自分は今確実に挫折に向かっていて、ある一つの出来事により"挫折"の刻印をはっきり押された、という過程の映画だと思うのです。
一見すると過去の未完成の曲の続きを作る行為は友達とわくわくしながら作れる、魅力的な作業に思えるし実際そう描かれているのだが、他者の人生(=永野芽郁とその父と過去の彼女の作った曲)に参加する行為(それって人生の様々な場面で直面するんですけど)には必ず"責任"が発生する。つまり大げさに言えば一つの歴史に参加することであり、それって実は軽いようで痛みや責任を伴うよ、とこの映画は語っていると感じるのです。

そのきっかけとなる人物が永野芽郁ちゃんですね。
ここから先の話がこの映画の評価すしたい2つ目の部分です。

「彼女は一体何者なのか」という映画の中でも問われている問い、に明確な答えはないと思うのですが、この映画はそもそも多次元の世界の構造になっていると解釈できます。
そもそも、映画を見るという行為それ自体も「映画の中の世界」と我々「見る側の現実世界」という必ず二次元的な世界が存在していますよね。だから橋本愛はカメラ目線で我々に語りかけるわけですね。
映画『PARKS』は「映画の中の世界」に①橋本愛の世界と②永野芽郁の世界、が交差し、そこからさらに飛躍して永野芽郁の行き来する③過去の世界があるから、④我々「見る側の現実世界」を入れると4次元ですね。4次元パラレルワールド同時進行ムービーですよね。そういうかなり難しいことをゆるふわでやろうとしているのですねこの映画は。

昔映画友達に「自分が映画を撮るなら諏訪湖を舞台にしたい」と言ったことがあって。(撮ることはもう100%ないけれど)諏訪湖って四方が山に囲まれているから、"外部"を感じさせないっていう土地の感じがすごく良くて、私はそういう舞台設定がめちゃくちゃ好みなんです。(ジョンカーペンターとかそういう作り方しますよね)

映画の序盤で「外部」から井の頭線に乗って永野芽郁ちゃんが公園を眺めながら登場するのはものすごく象徴的ですよね。そして消える時も井の頭線で帰る。(JRじゃないのがいい)井の頭公園が唯一の世界と仮定しているわけです。駅周辺の繁華街までがギリ世界で、そのさらに先の世界は、基本ないんですね。

永野芽郁ちゃんは別の世界の住人で、本当に父親が亡くなったのか、そういう体の小説を作ってるのか(その辺は定かではないが)そこから橋本愛染谷将太の住む世界に介入するわけですよね。
ここで面白いのはどちらかがフィクションでどちらかが現実世界、という線引きも曖昧にしてしまっている部分で、場合によってはこれが映画の敷居をぐっと上げてしまっている要因でもあるのかなと。

一応私なりに解釈すると、永野芽郁の世界、橋本愛の世界はどちらも現実であると考えてます。『PARKS』はフィクションと現実を捻じ曲げているわけです。終盤に永野芽郁ちゃんが家を出た後、橋本愛の自分自身への問いかけからカメラのピントがぼやける場面があります。映画全体がピンボケします面白いですね。映画そのものが現実とフィクションをグラつかせてしまってるのです。または全てが現実に起きていることであり、同時にすべてが小説(=映画)の中の出来事でもあるという表現のほうが正しいかもしれません。

つまり何が言いたいのかというと、もしかしたらこの文章を読んでいるアンタの人生も誰かの小説かもよ?なんて。
(※この解釈から、映画『PARKS』をジムキャリーの『トゥルーマン・ショー』っぽいってレビュー書いてた人がいて面白いなと思いました)

 

・まとめ

この映画のノリについていけなかったら自分もいよいよオッサンだな、と覚悟を決めて見たわけでしたが、この映画のノリについていけてまだ若い感覚持っているぜ、俺!
ということがいいたいのではなく、この構造はSF的でもあるが凄く音楽的というか、音楽やら映画やら創作に関わったことのある人であればこの映画の言わんとしていることは案外すんなり受け入れられるのではないかと。
例えば曲作りひとつとってみても、「歌詞の中の主人公」と、「それを書いているミュージシャンの自分」、そして本来の自分、これだけですでに3人自分がいてその境界って結構曖昧だったりしますよね。そういうこと必ず考えますからねある程度本気でやったことがあれば。
それら"3人の自分"が常に過去と現在を行ったり来たりしながら自らをアップデートしていく、その中から自分を肯定してくれる何かを見つけたりするのが"成長"とかって言葉に置き換えられるんじゃないでしょうか。(それが音楽なのか、恋人なのかは分かりませんが。)

前クールの傑作TVドラマ『カルテット』の第9話で満島ひかりの名言があります。

真紀さんは 奏者でしょ?

音楽は戻らないよ 一緒

心が動いたら 前に進む

好きになった時 人って過去から前に進む

過去をアップデートするためには、"好き"という強い気持ち・強い愛が必要なんでしょうね。橋本愛にとっては自分の本当に好きなことが何かを見つけ出すまで、まだ前進することは難しいのでしょう。だからこの映画は成功までの道筋すら提示しない。挫折から前進するための"覚悟"みたいなものを経験するお話だったのかな、と思います。

(※『カルテット』は、好きなことは見つけたけど明確に"成功"をしないまま30代まで突入した4人のお話でした。結構つながる部分ありますね。橋本愛の過去のCM子役の呪縛と満島ひかりのマジシャン子役とか。どっちもYOUTUBE見る場面あるし)

 

・リンク

www.parks100.jp

OUTSIDE IN TOKYO / 瀬田なつき『PARKS パークス』インタヴュー